漢字バカ200撰

漢字が好きなので、書と漢字の成り立ちから話を広げるブログ。広がらない時は、別のことを。

「熟」の漢字 Youth blossomed into maturity. 〜若さはやがて成長して成熟へ〜

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・煮詰まると、味がしみて美味くなる二日目以降。

ジュク(juku)、うれる(u-reru)と読まれます。
ジュクの元の発音は「孰(ジュク:juku)」で、

「煮る(ni-ru)」の意味を持っていて、「熟」の元の字です。

「灬(れっか:rekka)」は、
煮炊きするときの「火(hi:fire)」をあらわしますが、

字の物語から考えると、「孰」は煮えてるもの。これに「火」を加えるので、

「よく煮ること」となり、時間をかけたり、

手間をかけるために時間を費やしたりすることを、

総じて「熟」と読むようになりました。

 

「じっくり、コトコト。」は、「熟」への過程を表していますね。

なんでも時間をかければ、料理は美味くなるのか。

これは、文化の違いは味覚の違いとも言えそうで、

カレーなんかは二日目がうまい!と日本ではよく言われますが、

カレーはインド料理のことなのに、

「インドのカレーは寝かせない。できたてを食べるの。」だそうです。

これは、インドの医学、アーユルヴェーダの学問からきていて、

冷めたもの、日を置いたものは、食べません。

カレー=インド料理のことですから、

日本のカレーとは宗教上の理由も、はたまたインフラ整備の問題もあり、

素材も食べ方も違うので、文化に対して合理的な考えですよね。

僕は、大鍋にわっさり作って、だいたい三日を目安に食べきります。

 

話は逸れましたが、このことから、

「なれる、しあがる」という意味に使われる文字です。

※ 白川静 常用字解より 一部引用

 

・「余計なものが増えていくからだよ。」

以前、僕は、このような記事を書いていました。

 

www.hokushin-myouken.com

そのうち、プロフィールも書き直そうと思っているのですが、

このブログを書いているうちに、

今のような「漢字」のブログにどうしてもなって行きました。

「年を重ねる」ということは、「時間を費やす」ということなので、

読んでくださる皆さんは、

貴重な時間を割いてこのブログへ訪れてくださっているのですから、

多少なりとも時間の割きがいのあることを、

ご提案できればいいなと考えながらも、稚拙な文章を綴っています。

前項のブログを読み返しても、まだまだ熟慮が足らんなぁ。

と恥ずかしくもなりますが、年を重ねるとは一体どういうことなのか。

それをなぜ人は恐れるのか。ということに疑問を持ったのは、

実は、このテーマからは全く関係のないことからでした。

 

僕の住む町は、喫茶店、カフェの数がかなり多く、

珈琲の焙煎を自ら手がけているご店主も比例するほどで、

そんななか出会った一人のマスターが、

豆についていろいろと教えてくださっていた時でした。

そのお店の豆は、

お客様に提供するまで三年以上は温度や湿度を保って寝かせるのだそうです。

「エイジング」と言われるもので、

旨味や香りのエネルギーに、時間という内圧をかけることで、

淹れた時に一気にそれらが広がるようにするのだとか。

当然、年数をかけるということは、コストもかかるのでしょうが、

普通のお値段で、最高に素晴らしい珈琲をいただくことができます。

どうしてもっと儲けようとしないのですか?

と訊いたら、「余計なものが増えていくからだよ。」と、

シンプルに答えられた時のお顔が、かっこよくて。

そこで、「加齢の恐れ」との違和感を持ったのです。

 

・さらば、少年の日々、、、。

人は、誰もが大人になって行きます。

けれども、肉体的な成長は目に見えるものであっても、

精神的には子供のままであることも、あると僕は思います。

僕自身が、そうだと思うからです。

アダルトチルドレンという言葉を耳にしたことはないでしょうか。

これについては、いつか書く心算ではありますが、

自分を取り巻く悩みや苦痛は、どうやらここにあるのではないか。

と、かなり前から実感があったのですが、認めざるをえない事実の中、

そんな自分とどう向き合って行こうか、それを今、模索中です。

 

けれども、向き合う覚悟ができると、

人間、不思議といろいろなことが楽になるものです。

成熟とは、「いい大人」になることではなく、

「いい人間」へ近づいてゆくことなのだと思います。

それは、自分がイメージしていればそれでいいことであって、

それぞれの「いい人間」像は違って当たり前です。

 

今日も長々となってしまいました。

最後までのお付き合い、誠にありがとうございます。

 


熟 Aging