漢字バカ200撰

漢字が好きなので、書と漢字の成り立ちから話を広げるブログ。広がらない時は、別のことを。

ザ・ノンフィクション【追いつめられた男】2018/03/04 再放送

再放送だとは知らずに観ていました。

2017/12/17に放送されたものだそうです。

 

「ザ・ノンフィクション」は、

上京したての頃から観ていて、

当時は他人事のように眺めていたものです。

 

今回の主人公は、

40歳で歌舞伎町のホストクラブに務める、

「伯爵」。

 

本放送からはもうだいぶ経っているし、

取材、編集、放送までの期間からしても、

相応の時間が流れているわけですから、

また現状も変わっているのかもしれません。

 

ホスクラと言うと、

やはり若くて肝臓も元気な若者が、

女性客に楽しんでいただくために無理を承知で、

お酒を煽るお仕事。

というのが一般的な印象です。

 

ツイッターを覗いてみると、

いろいろな見解がつぶやかれていますが、

おそらくは20から30代、もしくは、

あまり夜の仕事には関わりないのであろう人々の意見が、

多く見られました。

 

 

僕の友人も、このような仕事に10代から携わっていて、

今では、経営の方に注力していますが、

20年ほど前に出会った当時は、

「調子悪いんっすけど、元気っす!飲みましょう!」

けれど、顔は常に焼酎のボトルのような色合いでした。

靴に酒を入れられてそれを一気に飲まされたり、

お客様への営業活動で大変なわがままを聞いたり、

駆け引きだらけの毎日で、誰も信じられなくなったり。

それはそれは、人間の欲望のほとんどを受け入れる、

大変な仕事だな。と、勝手に心配していたものです。

 

くだんの「伯爵」も例に漏れず、

僕が友人と楽しんでいた頃の営業スタイル。

観ていて、懐かしささえ感じましたが、

僕も歳を重ねたせいなのか、違和感も同時に覚えました。

それを差っぴいたとしても、

どうしてもこの仕事がしたい。

いや、もうここまできたら、よっぽどのことがない限り、

引き返すことができない。

そんな不器用さが見え隠れしていて、

つぶやかれているほどの不思議さはあまり感じませんでした。

「ああ、世代ってどこの世界にも、その違いは必ず出てくるんだな。」

時の流れに沿って、価値観も稼ぎ方も変わってゆくものなのだから、

「伯爵」は過去の栄光にしがみついて失敗したのではなく、

自分のコントロールの仕方を間違ったのだな。

そりゃぁ、想像しかできませんが、

お店と部屋とお客様との時間と。

それしかなければ、自分が今どこにいてどう歩いているのか、

わからなくなるのも当然です。

そこには「伯爵」なりの思うところがあったのでしょう。

 

余談ですが、

「伯爵」というのが、マズかったかもしれません。

歴史的に見ても、「爵位」を授かった人間は、

手放すことがまずできません。

授かったのか、自称であるのか。

いずれにしても、この「冠」に人は、

やはり自由を奪われるものです。

「立場」とか「地位」とか。

人はそういうものが欲して、それに伴う対価も求めるものです。

ただ、自分の名前以外の呼び名というのは、

あだ名みたいなものだと僕は思っています。

「対価」と「冠」のバランスが崩れた時、

 

人は、「ジリ貧」になって行きます。

 

その苦悩が、

「ヒロシ」のナレーションからも、

この番組ではよく描かれ、伝わってきました。

言葉とは、不思議なものですね。

 

しがみつくことも大切。

でもやっぱり、物事には「方法」と「時期」というものがあります。

それは、自分を俯瞰できて、初めて見つかる場合もあれば、

他人様にご指摘をいただいて、

気持ちの抗いに打ち勝って手に入る場合であったり。

それでも、その場所が、今自分にとってかけがえのないものであり、

唯一の居場所だと思い、譲れないものなのであれば、

とことん初心に還ってやり直してみることも、

「この仕事が好きだ。」という表現によって、

自分への落とし所になるのではないかな。

 

また、繰り返してしまうかもしれないけれども、

このままというわけには、何事もいきません。

 

時間は容赦なく流れているのだから。