漢字バカ200撰

漢字が好きなので、書と漢字の成り立ちから話を広げるブログ。広がらない時は、別のことを。

「傑」の漢字 to excel above all others 〜比類なき素晴らしさ〜

 こういう生き方は、近年なかなか無い。だから、イチロー

www.nikkansports.com

 

寂しい思いもありますが、

二度と雄姿を見ることができないわけではないことを期待しているし、

野球と死ぬまで向き合う姿こそが、雄姿なのだと思っています。

 

ケツ(ketsu)、すぐれる(sugureru)

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この漢字の出処は、ストーリーが複雑すぎるので、

今日のところは割愛させていただき、

右の「桀(ケツ)」が読みの元になっていることから、

この文字の意味から、

ともかく「激しい力」。

それを備えている「人」ということになります。

※ 白川静 常用字解より一部引用

 

「傑」の個性

youtu.be常用漢字で、十三画で構成された文字。部首は「にんべん」です。

今回は、できる限り「楷書」に近い形で書きましたが、

元になっているのが「古典」の臨書(見たまんま真似て書くこと)なので、

古い文字の構図になっています。

にんべんはちょっと控えめに小ぶりに書きます。

一画目の「弧」に寄り添うように三画目を引きます。

それと、四画目の「弧」にも同様に六、八画目も寄せて書くと、

全体的にまとまりができるので、

さらに「木」の横棒を長めにまっすぐ引くと、

どっしりした印象が出来上がります。

 

「俺がイチローだったらなぁ。」

今は亡き心友が、僕が悩んで憔悴しきるたびにかけてくれていた言葉です。

イチローだったら、力を貸してあげられるのに。

という意味だったのか。

真意はわかりませんが、でも、その言葉に救われたものです。

 

今回の会見を観て、

何かが終わった感が小さいのはなぜなのか。

イチローが「すごい」のは、誰もが認知しているところです。

僕が考えるに、

イチローがいつも我々に教えてくれている「すごさ」とは、

「継続」という難題の実践と、その先にある成果の提示なのだと思っています。

「朝鍛夕錬(ちょうたんせきれん)」という言葉があります。

字の通り、「朝に鍛(きた)え、夕に錬(ね)る。」

鍛錬は、主に「刀」を鍛える時の用語が、

人の精神になぞらえて表現された言葉。

日々、一つのことをコツコツ積み重ねることは、

何よりも、「心」と戦わなければならないので、

「三日坊主」という現象が生まれます。

それだけならばまだいいのですが、

続けられない言い訳を探し回るために、心があちこちを彷徨い始めると、

今度は、長い迷いの旅に出て行ってしまいます。

これが、「心」のタチの悪いところ。

更には、「なんぼ経っても結果が出ない!」

ということに嫌気がさしてきて、自分や環境を責めるようになると、

もう大変です。

 

「諦めない」とか、「情熱」という言葉が、

頻繁に使われることがありますが、それは非常に拙速な表現手法で、

「使命」として考えた場合、なんぼやっても結果が出ない。という結果を、

成果として、どこかの節目で引き受ける。

そして、やり方や考え方を変えてまたコツコツ続ける。

ということができてこそ、「諦める」「諦めない」という言葉が使われます。

それは、十年単位、人生単位の話。

短い単位で終了を決める場合は、「やめる」といいます。

それほどに、一ところに心を定めて物事を行うこととは、

難しく、もうこの先は、仏教の世界観「さとり」に達してきます。

加えてやはり、「感謝」の深さが、イチローは人並み外れているのだと、

僕はそう感じています。

イチローダライ・ラマになぞらえて表現されたのは、

そういった部分もあるのかもしれません。

 

でも、人間、「飽きる」のです。

外野が自分を見ていて飽きるのは、他人事なので、どうでもいいことなのですが、

自分が自分に飽きてくると、どうしようもなくなります。

それを回避するために、人には「くらし」があり、

そこに人がいて、素晴らしい仲間が形成され、

「豊かさ」が生まれ、

これを美しく演出してくれる趣味や、娯楽、芸術、旅、美味なる食事、

文化などが、適宜もたらされているのだと思っています。

満たされない。と強い不満を持っている人ほど、

飽きっぽいという理由は、ここにあります。

 

「どんなにどうしようもなくても、

俺はお前と一生向き合い続けるぜ。」

前述の心友は、僕にとっては、

ちゃんとイチローだったのでした。

 

長くなりましたが最後に、

道を極めるために必要な、九つの条件を宮本武蔵五輪書からご紹介して、

今日の記事を結びたいと思います。

本日も、お読みくださり、誠にありがとうございます。拝

 

 

五輪書 (講談社学術文庫)

五輪書 (講談社学術文庫)

 

 

  • 第一に、よこしまなきことをおもふ所
  • 第二に、道の鍛錬する所
  • 第三に、諸芸にさはる事
  • 第四に、諸職の道を知る事
  • 第五に、物事の損徳をわきまゆる事
  • 第六に、諸事目利を仕覚ゆる事
  • 第七に、目に見えぬ所をさとってしる事
  • 第八に、わづかなる事にも気を付くる事
  • 第九に、役にたたぬ事をせざる事

〈現訳〉

  • 第一に、実直で、正しい道を思うこと。
  • 第二に、道は、鍛錬すること。
  • 第三に、広く多芸に触れること。
  • 第四に、広く多くの職業の道を知ること。
  • 第五に、物事の利害損失を知っておくこと。
  • 第六に、あらゆることについて、本物を見分ける力を養うこと。
  • 第七に、目に見えない所を、さとること。
  • 第八に、わずかなことにも気をくばること。
  • 第九に、役にたたないことは、しないこと。